マンガに出てくるような、硬貨を平らに変形させたり、りんごを力ずくで潰したりする握力の強さに驚かされることがありますね。
そんな驚きの握力の持ち主として、意外かもしれませんがコアラが挙げられています。
実際に1トンの力を持っているという話ですが、果たしてそれは真実なのでしょうか?
なぜコアラがこんなにも強い握力を持っていると言われているのか、そして実際にどれほどの力なのか。
他にも握力が強いと言われる動物たちと比較しながら、その真相を探っていきましょう。
コアラの1トン握力説の真相
残念ながら、コアラの握力を精確に測定することはできないというのが現状です。
これは、あくまでも憶測の域を出ないため、その点をまずはご理解ください。
コアラの握力に関する、確かなデータが存在しない主な理由を見てみましょう。
特別な測定器具の必要性
握力には「握りつぶす力」「つまむ力」「保持力」「開く力」の4つのカテゴリーがあります。
通常、「握りつぶす力」の計測が行われますが、これには特別な握力計が必要になります。
ただし、これらの計測器は主に人間用に開発されており、動物特有の手形や握り方を考慮した計測は困難です。
広範なサンプルの必要性
コアラだけでなく、どの動物の握力を調べるにしても、「種類」「性別」「年齢」など多岐にわたる要素を考慮する必要があります。
これには、広範囲にわたる調査が必要となります。
さらに、このような調査が動物虐待と見なされるリスクもあるため、十分な予算と倫理的合意が必要です。
全力での握力使用が不確定
大脳の発達していない動物が、計測器具を全力で握ることができるかどうかは疑わしいです。
特に、物を握る機能がない動物に関しては、そもそも握力を測定すること自体が不可能となります。
2004年に、日本のあるテレビ番組で取り上げられたコアラの1トン握力説ですが、その詳細な検証方法や証拠は明らかにされておらず、伝聞情報にすぎません。
これらの理由から、コアラの握力が1トンあるという話は、信憑性に欠けるものと考えられます。
コアラの魅力:握力を超えた特性
コアラの握力が1トンに達するという議論がしばしば話題に上がりますが、コアラにはそれをはるかに超える魅力があります。
この愛くるしい生き物が持つ、独特な特徴や可愛らしさに焦点を当ててみましょう。
コアラはオーストラリア東部の美しい森林に生息する特有の哺乳類
コアラは主に木の上で生活をしています。体重は4〜15㎏。その推定握力は100kgwもなく、20〜30kgwほどです。
コアラの手は特異な構造をしており、3本の指が片方に、残る2本が反対側に位置しているため、他の同じサイズの動物と比べて物を握る能力が高いのです。
コアラを抱っこできる場所は少なく、日本国内ではまず不可能です。オーストラリアまで行かないと願いは叶いません。オーストラリアでコアラを抱くことを許可されている州は「Western Australia(西オーストラリア州)」、「South Australia(南オーストラリア州)」、「Queensland(クイーンズランド州)」です。(2017年11月 時点)
もしコアラが強力な握力を持っていたら、人々が抱っこ体験を楽しむことは難しいでしょう。
コアラの握力は人間に危害を加えるほど強くはありませんが、それでも感じ取れる程度の力はあります。
そのため、コアラとの触れ合いは安全であり、彼らの魅力的な瞳や柔らかな毛皮は、多くの人々を虜にしています。
握力の強い動物ベスト5
握力というのは、地球の引力によって1キログラムの質量にかかる力、つまり筋肉の力を示す単位で、kgw(重量キログラム)で表されます。
この定義を聞いても、直感的に理解しにくいかもしれませんが、例として日本の成人男性では平均で約45〜50kgw、女性では約30kgwの握力があるとされています。
世界で記録された最高の握力は、マグナス・サミュエルソンが持つ192kgwです。
しかしながら、人間を遥かに超える握力を有する動物たちが存在します。
ここでは、そのような動物たちの中から、特に握力が強いとされるトップ5を推定値を基に紹介します。
ゴリラ(推定握力:400〜500kgw)
ゴリラの驚異的な握力が推定される理由の一つは、彼らが草食動物でありながら筋肉が常に強い状態を保っていることにあります。
ゴリラは1日に18〜30kgもの食物を摂取し、これは約215本のバナナに相当します。
巨大な体で木を登る能力も、彼らの強力な握力が推定される根拠の一つです。
オランウータン(推定握力:350kgw)
熱帯雨林の低地に生息するオランウータンは、長い腕を駆使して広い範囲を移動します。
体重120kgのオランウータンが腕の力だけで移動する姿から、高い握力を持っていると推測されます。
チンパンジー(推定握力:200〜300kgw)
体重が60kg程度の雄チンパンジーでさえ、その握力は体重比で約5倍となるとされ、驚異的です。
さらに、激怒したメスチンパンジーが527kgwの握力を発揮したという話もあります。
クマ(推定握力:150kgw)
熊は、その強大な筋力で人間を容易に傷つけることができるため、高い握力を持つと推定されます。
パンダもこの範疇に入る可能性が高いです。
ニホンザル(推定握力:35kgw)
平均体重約10kgのニホンザルは、その体重の約3倍の握力を持つと推定されます。
これは、木から木へと移動する際に必要な、自身の体重を支える強力な握力があるためです。
これらの動物たちの握力はあくまで推定値に過ぎませんが、彼らの生態や身体能力を考えると、なぜそう推測されるのかがわかります。
木にしがみつく生活をするコアラも「強い握力を持つ」というイメージがありますが、爪で木を移動するナマケモノのように、握力が0kgwとされる動物もいます。
まとめ
動物たちの握力を正しく測定することは、現在のところ不可能です。
この測定が難しい主要な3つの理由は、
- 動物ごとに特別な握力計が必要なこと
- 広範囲から多くのサンプルを集める必要があること
- 動物がその能力を最大限に発揮しているかどうかが判明しない
ことです。
この記事では、特に握力が強いと推測される五つの動物を紹介しました。
①ゴリラ ②オランウータン ③チンパンジー ④クマ ⑤ニホンザル
コアラについては、圧倒的な握力を持つわけではありませんが、その魅力的な外見で多くの人々の心を掴んでいます。
握力が強くなくても、そのチャーミングな姿で人々を魅了し続けています。